2005年10月29日

Tropical Rain Forest 4 【連載】

俺は一人で旅をしている訳ではない。
連れとは0時までの約束で、勝手をさせてもらっていた。
俺達は、ホテルに帰らなくてはいけない。
まるでシンデレラみたいだな、なんて自虐的に思う。

Tropical Rain Forest 4 【連載】


明日の夜には、ホーチミンを発つ。
明後日の今頃は、一人東京の狭いワンルームで、今日の事を思い出すのだろう。
だからこそ、この出会いを忘れたくない。汚したくない。
寂しい気持ちを心の奥深くに沈め、俺は精一杯の笑顔で、手を振り、言った。

「Good bye, Huyen! See you again!」

ちょっとセンチメンタルになりそうになる俺は、無理矢理タクシーに押し込められ
ホテルへと向かう町の風景を眺めていた。
Midnightを過ぎた後の道路は、それでも昼と変わらずバイクの流れが途切れない。
ヘッドライトの閃光が長く尾を引き、発光器を持つ深海魚が群れなす水深200メートル
を漂っているような気分にさせる。
どこまでも、ただ沈んでいくような気分。

ホテルに着いた俺達は、粘りつく汗をシャワーで流し、もう一度昼間と同じベッドに
倒れこむ。もはや、何も考える事ができない。
ただ、深い深い眠りに沈んでいく。



突然、肩を揺さぶられる。
何が起きたのか、全くわからない。頭が働かない。

相部屋の連れが、不機嫌そうな顔をしながら目の前に立っている。
ベッドについているデジタル時計は「AM1:20」と表示している。
連れが事情を説明してくれた。
なんでも、ホテルに俺を訪ねて人が来ているという。
フロントから電話がかかってきたが、フロントの人間も訝しがるような素振りとの事。

どこかで俺の情報を手に入れ、インネン付けにきた人間だったら怖い。
とりあえず、腕っぷしの強い相部屋の連れを傍らにフロントまで降りていった。

フロントの、気の弱そうな小男が、眉間にこれ以上ない皺を寄せて走り寄る。

「ああいう奴らは危ない。絶対に気をつけろ。」

ドキドキしながらホテルのエントランスを出ると、そこには見知った顔が。
Huyenだ。
しかし、その後ろから腕を組んでにじり寄る人影が現れた。


本編もよろしく

ランキングくりっくよろしくちゃん。


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Posted by miya/みや at 23:59│Comments(0)2005年8月NW
 
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